マルチスペクトルカメラの解説と活用事例MV

ドローンマッピング マルチスペクトルカメラの解説と活用事例

マルチスペクトルカメラについてご存じでしょうか。普段私たちの目では観測できないところまで詳細なデータを取得できるカメラで、農業分野や宇宙分野で活躍しています。本記事ではマルチスペクトルカメラの概要、RGBカメラ、ハイパースペクトルカメラとの違いや活用事例について解説します。

マルチスペクトルカメラとは

マルチスペクトルカメラとは、被写体が放出する光のスペクトル情報を観測できるカメラのことをいいます。紫外線、可視光線(人間が観測できる光)、赤外線にはそれぞれ波長が存在し、光スペクトルとは波長ごとに強度分布を並べたものになります。

私たちの周りにある物体は、太陽の光を受けて出す可視光線以外に、物体そのものが持つエネルギーとして赤外線も放出しています。

マルチスペクトルカメラは赤外線の波長も観測可能であり、さらに各波長の強度を観測できるため、太陽光が少ない環境下での物体認識や、人間の目では識別できない微妙な色の違いを識別することが可能なのです。

マルチスペクトル・ハイパースペクトル・RGBカメラ・の違い

マルチスペクトルカメラ、ハイパースペクトルカメラ、RGBカメラ(可視光カメラ)についてそれぞれ説明します。

違いは観測可能な波長の種類です。「RGBカメラ」は青・赤・緑の3種類の波長帯域(バンド)を観測できます。3種類よりも多いバンド数を観測できるカメラを「スペクトルカメラ」と呼び、さらに観測可能なバンド数の違いにより「マルチスペクトルカメラ」と「ハイパースペクトルカメラ」に種別できます。

各カメラの特徴を以下の通り分かりやすくまとめました。

カメラ観測可能バンド数特徴
RGBカメラ3人の視覚情報に近い情報を取得可能
マルチスペクトルカメラ4-10程度※1可視光線の帯域に加え近赤外線※2の帯域の波長を観測可能
ハイパースペクトルカメラ100、200以上マルチスペクトルカメラよりも観測可能バンド数が遥かに多く、より詳細な情報を取得できるが、マルチスペクトルカメラと比較しコストが高い
※1 明確な定義はないが10バンド程度のものをマルチスペクトルカメラと呼称するのが一般的
※2 赤外線の中で波長が短いものを近赤外線と呼ぶ

マルチスペクトルカメラの活用分野

マルチスペクトルカメラは様々な分野で使用されていますが、本記事では活用分野として挙げるのは農業と宇宙分野です。

農業分野ではスマート農業の一環として、農作物の詳細データを把握するためにマルチスペクトルカメラが活躍しています。スマート農業とは、ロボット技術、通信技術を活かした効率的で高品質な生産を実現を推進する農業です。

マルチスペクトルカメラを搭載したドローンにより、農作物からの光スペクトルを観測することで、生育状況、収穫量、糖度などの情報を取得し農業の生産性を上げることができます。

他方、太陽光が届かない宇宙空間では、天体やチリが放出する赤外線を捉える必要があります。そこで赤外線を観測できるマルチスペクトルカメラを使用することにより、肉眼では分からない天体の成分や運動情報を取得できるというわけです。

以降では具体的な事例をご紹介します。

スマート農業に不可欠なマルチスペクトルカメラ

マルチスペクトルカメラとドローンとの組み合わせにより、農作物の生育状況を把握することができ、農業分野での利用が進んでいます。

マルチスペクトルカメラにより取得した光スペクトルの情報から、作物の分布状況や活性度を示す指標となるNDVI(Normalized Difference Vegetation Index)が分かります。

従来は、航空機やヘリコプターから撮影した航空写真からNDVIを計測し作物の生育状況を把握していましたが、撮影場所の高度が高いため雲による遮蔽や解像度が低いことなどが課題でした。

一方で、ドローンは低空から作物を空撮できるため、マルチスペクトルカメラと組み合わせることで前述の課題を解決できます。さらにNDVIから肥料や農薬を散布するタイミングが把握でき、肥料や農薬の自動散布が可能になることも、マルチスペクトルカメラとドローンを組み合わせた際のメリットの一つです。

昨今、国の政策でもスマート農業を推進している理由は以下のとおりです。
1.省力化により人手不足・労働力不足・高齢化を解消するため
2.省人化による生産コスト削減
3.単純作業の自動化による生産性の向上
4.農作物の品質向上と平準化
5.熟練者の技術やノウハウのデータ化による技術継承

宇宙分野で利用されるスペクトルカメラ

遠くの天体から発せられた光が私たちの観測地点に達するまでに、宇宙が膨張しているため光の波長が伸び赤色にシフトします(宇宙論的赤方偏移)。距離によっては光の波長が赤外線・中赤外線または、遠赤外線までシフトするため、宇宙探索にはそれらの波長を捉える装置が必要です。

NASA and A. Feild (STScI)

近年、宇宙分野でマルチスペクトルカメラ、ハイパースペクトルカメラの技術を活用しているのが、宇宙望遠鏡 James Webb Telescopeです。 NASAが主導で開発した宇宙望遠鏡であり、2021年12月に打ち上げられています。今もなお、宇宙空間を観測し続けています。

下に示す画像がJames Webb Telescopeにより観測したサザンリング星雲です。左の画像が近赤外線で右の画像が中赤外線で撮られています。
同じ観測対象でも、光の波長により把握できる情報が違うことがお分かりいただけると思います。

NASA, ESA, CSA, STScI

スペクトルカメラのご紹介

弊社のおススメのドローン専用のマルチスペクトルカメラをご紹介します。
ミカセンスシリーズのRedEdge-P・Altum-PT及びセンテラの6Xマルチスペクトルです。それぞれのカメラがグローバルシャッターを使用しているので、高速でも画像が歪みません。一般的な用途として農作物の生育状況、灌漑状況の見える化、水域分析、肥料分配の効率化等で使われています。

RedEdge-P

5スペクトル及び5.1MPパンクロマチックバンドのマルチスペクトルカメラです。パンシャープン処理をすることで高度60mでGSD(地上解像度)2cmになります。

Altum-PT

RedEdge-Pと同じシリーズでさらに高解像度(12MP)のカメラです。スペクトルバンド以外にもサーマルセンサーがついているので、使用可能な用途が大幅に広がります。

Sentera-6X

20.1MPのRGB、3.2MPのスペクトルバンドの解像度を持つカメラです。1秒当たりに3枚の画像が撮れるため作業の時間を削減できます。

まとめ

本記事ではマルチスペクトルカメラの概要、RGBカメラ、ハイパースペクトルカメラとの違い、宇宙・農業分野での活用事例について解説しました。
マルチスペクトルカメラとハイパースペクトルカメラは、可視光線では観測できない詳細なデータまで取得できる優れた測定機器です。
今後は特にドローンと組み合わせることで、分析・生産効率を上げ農業分野での活躍が更に広がるでしょう。