FARO新型固定式レーザースキャナー「Blink」使用レポートMV

3Dマッピング FARO新型固定式レーザースキャナー「Blink」使用レポート

2025年4月に発売されたFARO社の新型レーザースキャナー「Blink」を弊社測量技術者が検証場で計測し、その能力と使い勝手をまとめました。

【現場作業】

BlinkはFARO社が出した初の廉価版固定式レーザースキャナーで、通常の固定式レーザースキャナーFocusシリーズの半額程度と非常に安価です。また、取り回しも簡単で、エントリーモデルとしても使いやすいです。計測はスマートフォンアプリ「FARO Stream」で行います。

Blinkを使用する際は基本的には三脚で機械を設置します。今回は同梱の三脚を使用しましたが、ネジ変換を使えば測量用三脚等さまざまなものに固定することが可能です。

計測開始は三脚に据えて、アプリのスタートボタンを押すだけです。三脚に据える際は必ずしも水平である必要はなく、回転しても倒れない程度にまっすぐ立てていれば問題ありませんでした。なお危険なほど傾いているとアプリに警告メッセージが出ます。

1回の計測時間は25秒程度とかなり早いです。1周回転しながら点群取得と写真撮影を同時に行います。

1回目の計測を行うと、計測点の周りに水色の円が出てきます。この円は現場環境によって変わることもありますが基本的に半径5mです。次の計測はなるべくこの円の中で行うようにします。これを外れると円が黄色くなって「最後のスキャン位置の近くに戻ってください」とメッセージが出ます。ただしこれは多少逸脱しても問題なく接合可能でした。移動しているとアプリの画面上に移動ルートが出てきます。これはOrbisで培ったSLAM技術が組み込まれているからで、これにより計測間の接合精度を高めています。

一回の計測で5m程度しか離れることができないので、広範囲の計測を行う場合は、かなりの回数の計測が必要になります。今回は建物がある500㎡程度の計測でしたが、31スキャンが必要でした。そう計測時間は45分程度です。

計測間は縦方向の移動をしても問題ありませんでしたが、水平移動時に比べるとちょっとこまめに設置したほうがよさそうです。移動距離5mというのは水平距離ではなく三次元的な斜距離で考えると感覚がつかみやすいかもしれません。

同梱の三脚は一般的なカメラ三脚なのでどんな場所にも簡単に設置することができます。

【データ処理】

計測完了後はクラウドソフトウェア「Sphere XG」にデータをアップロードして、クラウド上で処理を行います。アップロード方法はスマートフォンアプリ「FARO Stream」からスマホの回線を使ってアップロードする方法(通称ゴールデンパス)と同梱のUSBメモリを使って計測データを読み込んで、PCからアップロードする方法(通称シルバーパス)の2種類があります。
ゴールデンパスの方が簡単ではありますが、データを本体からスマホに転送してからアップロードする必要があるのとスマホの容量と通信容量をかなり消費するため大規模な計測を行う場合にはお勧めできません。今回は31スキャン行ったことによりデータ容量が11GBに達したため最初からシルバーパスを選択しました。

この他にFocus用デスクトップソフトウェア「FARO SCENE」を使用して処理を行うことも可能です(通称カッパーパス)。既にFocusを導入していて所有している場合はこちらも選択肢になるかと思います。また基準球を使った座標変換はカッパーパスでしかできません。

処理はアップロード込みで2時間程度でした。ただしクラウド処理は込み合うと順番待ちが発生することがありますので、必ずこの時間で処理が完了できるわけではありません。

【処理結果】

平面表示

3D表示

合成管理画面

Sphere XGでは点群の合成から閲覧、距離計測までを一通り行うことが可能です。特に合成は完全に自動で行うため手間がかかる合成作業の必要はありません。なお、万が一自動合成が失敗した場合には手動合成を行うことも可能です。
データを他者に共有したい場合にはリンクを発行し、それを送ることで簡単に共有が可能です。
ただしそこまで機能が豊富とは言い難いのと、大規模な点群だと表示するにもかなり重くなってしまうため点群データをダウンロードして他の点群ビューアソフトウェアを使うのがオススメです。ダウンロード形式はLAS・LAZ・PLY・XYZ・E57に対応しています。
全体としてかなりきれいな点群が作成できました。今回の試験計測データの点数は1億3600万点、LAZデータで935MBでした。

【FARO Orbis Premiumとの比較】

Orbis Premium

Blink

同じ場所を計測したハンディスラムレーザースキャナーOrbis Premiumのデータと比較します(別日の計測)。計測時間はOrbis Premiumの方が圧倒的に短く、同じ範囲を4分で計測完了しました。しかし点群の精度や色付けの正確さは固定式レーザースキャナーであるBlinkの方が良いです。

【総評】

廉価版とはいえ固定式スキャナーとして最低限の機能を備えているという印象です。また計測作業も簡単で、Sphere XGを使うことにより煩雑な処理が一切必要なく点群データを得ることができるのも大きな魅力です。
ただし計測回数をかなり多くする必要があるため、広範囲の計測が必要になりがちな土木および測量分野にはあまり向いていないように思います。建設および建築分野に最適化された機材と言って構わないでしょう。
点群は非常にきれいなので活用できる場所は多いのではないかと思います。