いまさら聞けないSLAMの技術や活用についての解説MV

3Dマッピング ドローンマッピング いまさら聞けないSLAMの技術や活用についての解説

近年、SLAM技術が自動車、ロボット、ドローンの分野で注目されています。あまり聞きなじみのない言葉ですが、自動運転、自立移動、自動飛行を支える重要な要素技術です。本記事では、 SLAMの概要から仕組みと種類、適用事例までご紹介します。SLAM技術について理解が深まるはずです。

SLAMとは

SLAM (Simultaneous Localization and Mapping)とは、ドローンやお掃除ロボットなどに利用されており、自分が地図上にどこにいるかの推定(自己位置推定)と周囲環境の把握(環境地図作成)を同時に行う技術です。

ロボットが自分の位置を知るためには地図情報が必要であり、また地図情報を取得するためには、自身が移動する必要があるため、自己位置推定と地図作成を同時に実行します。 GPSセンサを利用した自己位置推定方法もありますが、SLAMはGPS測位を必要としない点が特徴です。

SLAM技術の研究が盛んになったのはここ20年であり、近年ではCPUの性能向上、センサであるカメラの低価格入手が可能なことから、さまざまな製品にSLAM技術が適用されています。

本章では、SLAMの重要性と仕組みについて説明します。

SLAMの重要性

SLAMはGPS測位を必要とせずに自己位置を推定できるため、ドローンの自動飛行、車の自動運転に必要な技術です。

GPS測位のみを利用したドローンでは、電波の届かない屋内や橋の下での自動飛行が困難ですが、SLAM技術との組み合わせにより可能になります。自動運転の分野においても、GPS測位とSLAM技術の 併用により走行環境の影響を受けずに位置推定と地図作成が可能です。

日本電産シンポの「S-CART」やOmronの「モバイルロボット」などの自動搬送ロボットは、SLAM技術を利用しています。また、フランスの「NAVYA」が製造した自動運転対応のバス「EVO」においても、 自車位置を推定するための技術としてSLAMが今後採用されます。
ドローン、ロボット、車などさまざまな分野で利用されるほどSLAMは注目されている技術です。

SLAMの仕組み

SLAMは、カメラやLiDARなどのセンサを用いて以下の手順により自己位置推定と地図作成を行います。

● ロボットは、各時刻で自身とランドマーク(目印となる特徴的なモノ)までの距離と方向をセンサにより計測。
● ロボットの位置とランドマークまでの距離から、ランドマーク位置を算出(地図作成)

● ひとつ前の時刻の場所から移動した距離をもとにロボット位置を算出(自己位置推定)

移動距離のみで自己位置推定する場合、目隠し状態での移動と同じため自己位置の正確な推定は難しいです。そのため地図作成と同時に行うことで推定精度低下を防ぎます。また、誤差を低減するために、 センサノイズから真値をとりだす方法やロボットが同じ場所に戻るときに辻褄があうように地図を修正するループとじ込みなど、さまざまな手法があります。

SLAMの適用事例

本章では、実際にSLAMを適用している3つの事例、掃除機・ロボット・ドローンについて紹介します。   

1つめの適用事例が、パナソニックが2020年に発売したお掃除ロボットRULOです。室内全体を把握し、自分の位置がわかるため効率的にルートを走行しながらのゴミ掃除ができます。

適用事例の2つめとしてサービスロボットがあります。ソーシャルロボティクスが2023年3月発売予定のBUDDYイントルーダーです。センサとしてLiDAR、3Dカメラを実装し SLAM技術により自己位置推定・地図作成を行うことで、飲食店での自動配膳ができます。また、Amazonは2021年にSLAM技術を用いた家庭用移動型ロボットAstroを発表しました。SLAMにより家中を自由に動き回れ、自宅の警備や見守りが可能です。

BUDDY
ASTRO

ドローンの分野では、アメリカのドローンメーカーSkydioが開発したSkydio2+に、SLAMが適用されています。GPS測位とSLAMによる自己位置推定を行い、ビル内部、建設物で囲まれた中を自動飛行し、効率的な点検業務が可能です。

SKYDIO

SLAMの種類

周囲の状況を把握するためのセンサの種類はさまざまです。
SLAM技術は搭載するセンサによって以下の通りに分類できます。
・Depth SLAM (ToF)
・Visual SLAM (HDカメラ)
・LiDAR SLAM (LiDAR)

Depth SLAM (ToFセンサ+SLAM)

Depth SLAMとは、ToFセンサにより得られた深度画像(近くを明るい色、遠くを暗い色で表現した画像)を利用したSLAM技術です。Tofセンサはレーザー光を対象物に照射し、レーザー光が跳ね返るまでの時間から距離を測定します。 レーザー照射による測距を行うため、光の少ない環境下でも測定できる点が特徴です。

日本のKudan株式会社は、Tofセンサとカメラを組み合わせたSLAM技術を開発しており、AR/VRアプリにも展開できると予想しています。

Visual SLAM (カメラ+SLAM)

Visual SLAMとは、カメラ画像を利用したSLAM技術です。画像データから対象物との距離を測定し、自己位置推定と地図作成を行います。

カメラは比較的低コストのため、SLAMの実装コストを抑えるメリットがあります。また画像情報から、障害物や人物認識など多くの情報を取得可能なため、自己位置推定以外に活用できる点もメリットです。 しかし、画像データから距離算出をする場合は、対象物の角や輝度の変化がわかる必要があります。そのため同じ景色などの色の変化が少ない環境下では距離取得が苦手です。

Visual SLAMは、既にお掃除ロボットをはじめ、無人搬送ロボット、ドローンにも適用されており、カメラを動かしながら対象物を撮影するSfM (Structure from Motion)技術により従来の課題を解決している企業もあります。

LiDAR SLAM (LiDAR+SLAM)

LiDAR SLAMはセンサにLiDARを使用したSLAM技術です。LiDARは、Tofセンサと同様にレーザー光を照射し、光が跳ね返るまでの時間から距離を測定します。そのため光量の少ない夜間でも測定可能です。LiDARとSLAM技術を合わせた大きな特長は移動(徒歩、 飛行等)しながら三次元点群を作成できるところです。

Depth SLAMは、色の明暗で距離を表現する深度画像から自己位置推定しますが、LiDAR SLAMは無数の点群データから推定します。測距精度は高いが、点群データの情報量が多いため計算負荷が高く、センサ自体もTofセンサ、カメラと比較して高価な点がデメリットです。

強力なSLAMを使用ているLiDARとして、GeoSLAM社(イギリス)のZeb Horizonや、FARO社(アメリカ)のFARO Orbisが知られています。詳細は下記のボタンからご確認ください。

まとめ

本記事では、SLAMの概要をはじめ、仕組み、適用事例、種類までを紹介してきました。古くから研究されてきた本技術は、最近ではお掃除ロボットをはじめ、配膳ロボット、ドローンや自動運転、多岐にわたる製品に適用されています。今後さらに活躍の分野を広げるでしょう。